金継ぎ

金継ぎ師による書評:継 金継ぎの美と心 The Spirituality of Kintsugi(清川廣樹著)

コロナ禍に空前の大ブームとなった金継ぎ(きんつぎ)。このブームは、もっと前の東北大震災ごろからひそかに加速していました。日本の伝統技術である金継ぎは、大量生産・大量消費で忙しい私たちの生活とは程遠い、知る人ぞ知る器の修復方法でしたが、なんと2020年ごろからたくさんの大人たちがこの技法に魅了されています。

金継ぎニーズの高まりとともに、金継ぎを自分で行う人へ向けた、たくさんの金継ぎ本が発行されてきました。
Yukiのブログでも有名な金継ぎ本10冊を紹介しています:https://kintsugi-girl.com/8725/
もう金継ぎ本は出尽くしたかと思いきや、2021年の冬、最新かつ新しい切り口で金継ぎについて書いかれた新着本が発刊されました!

金継ぎ師としても、金継ぎの会社をつくっちゃって運営する身としても、この本がどんな内容なのかとっても気になっていまして、発売開始すぐに購入してじっくり読んで考察し、レビューを書かせていただきました(๑˃̵ᴗ˂̵)و.
内容を公開するつもりはなく、いち金継ぎに携わる者(すでに金継ぎの知識がある者)が読んだ感想ですので、みなさまそれぞれ違う感想を持たれるかと思いますが、参考になればうれしいです♪

1. 本の基本情報「継 金継ぎの美と心 The Spirituality of Kintsugi」

  • 発売日:  2021年11月11日
  • 著者/編集: 清川 廣樹(きよかわ ひろき)
  • 出版社:淡交社
  • ページ数:  176ページ

京都の大徳寺の前にある「漆芸舎 平安堂」でご活躍の、清川先生が著者です。私も一度お邪魔したことがありますが、京都の美しい工房で、金継ぎ作品もならんでいて、金継ぎ教室も開催されているそう。お寺に参拝したついでに、ちょっと立ち寄りたくなるような素敵な場所でした。

出版社による内容紹介:
近年、日本のみならず海外でも注目を集めている「金継ぎ」。
室町時代に茶の湯の中で生まれ、育まれてきたこの技法には傷跡を受け入れ、“景色”として愉しむ日本人の心が込められています。
本書では、漆芸修復師として様々な分野の修復に携わりながら多くの外国人、会社経営者らに金継ぎの魅力を伝える講演会、ワークショップなどを行う著者が、国内外の人に向けて金継ぎの歴史、職人文化、美的感覚や感性が表現されたデザインのほか、海外で人気を博す理由を印象的なエピソードとともに紹介します。
なぜ金継ぎが世界に受け入れられ評価されるのか、美しいだけではない金継ぎの魅力を知ることができる一冊です。
著者について:清川廣樹
漆芸修復師。1957年4月大阪府生まれ。幼少より絵を描くことが好きで美術大学を目指していたが、父親が早くに他界したため、高校卒業後、蒔絵師に弟子入りして職人としてのキャリアをスタートさせる。その後、文化財、神社仏閣、調度品などの修復の一線で活躍する複数の職人のもとで研鑽を積み、28歳で独立。45年間、江戸時代に確立された伝統技法の継承者として、漆を用いた「漆芸」修復に携わる。その対象は建築、仏像、陶磁器、漆器、アンティーク家具、古美術品など多岐にわたり、学術関係者との交流も持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

清川先生は最近では国内外でたくさんのテレビメディアに報道される、金継ぎ業界では超有名な先生です。金継ぎ専門というわけではなく、漆を使った修復に長年従事してこられました。

目次(「BOOK」データベースより)
1章 金継ぎと漆芸の世界 その歴史と技法/2章 職人の世界/3章 繕うこと、その精神性と文化、世界とのつながり/4章 私の金継ぎ修復の工程/清川廣樹 金継ぎ修復作品/特別対談 人を繋ぐ名もなき茶碗(瀬川日照・本法寺貫首×清川廣樹・修復師)

2. この本の特徴(金継ぎ師Yukiの視点で)

これまで10冊以上にわたる金継ぎ本が刊行されていますが、清川先生の本は特に、日本語と英語が左右に併記してあり、世界に向けて読んでもらいたい内容であることがわかります。また写真も大きく、金継ぎの背景や歴史、職人文化や道具も掲載されていて、金継ぎが芸術として捉えられていることからも目で見て理解しながら読み進められます。

45年間修復に携わってこられた職人さんの執筆ということで、難しい内容かと構える必要はありませんでした。清川先生独自の考え方や昔からの職人さんの知識が書かれているにもかかわらず、現代の私たちに優しく読み聞かせてくれているような語り口です。この本は、金継ぎをマスターしたい人がやり方を学ぶようなハウツー本ではありません。金継ぎの大まかなステップは書かれていますが、どの材料をどれくらい入れて…のような細かい記載はありませんので、これを読んで金継ぎしようというものではありません。

しかし、結構勉強したつもりの現代の金継ぎ師(と名乗っていいかわかりませんが)の私でも知らなかった物語など一部書かれていて勉強になりました。これから金継ぎ師になりたい方には、ここに書かれている歴史や職人とはなんぞや、ということを知っておいてほしいな、と思いました。

3. 清川先生の金継ぎ本を読んだ感動ポイント

この金継ぎ本を読んでYukiがどんな点に心が動かされたか、ネタバレはなるべくしないように、感想をお伝えします。

1. 職人を取り巻く環境にフォーカスして伝えている

清川先生が蒔絵師からスタートして、今は消えていっている徒弟(とてい)制度で修復を学ばれました。昔の修行は本当に大変だったようで、最初の数年は師匠の身の回りの世話をするだけしかさせていただけないという、よく聞く昔の寿司屋みたいに、数年経たないと寿司をにぎらせてもらえないような感じだったとか。

今そんな制度をとると、若者は「もうやりたくない!」となってしまい、伝統技術を受けつぐ人がさらにいなくなってしまいますから、このような制度は少なくなっているのではないでしょうか。清川先生はそんな時代を乗り越えて、でも師匠に感謝しながら、技術のみならず漆の心を学んでいかれました。

伝統的な金継ぎは漆(うるし)を使いますが、今この漆芸産業はどんどん衰退しています。そして、職人技には良い道具が必要なのですが、道具を作る専門的な店が、後継者不足でどんどんなくなっていっています。そういった悲しいけど止められない日本の影の実態も、この本の中で語られています。また清川先生自身も、2021年6月からROLEというNPO団体を立ち上げ、後継者作りや文化保持に取り組まれていて、古くから伝わるモノ・人・技術を、人生をかけて繋いでいく活動をされています。

この本を発刊されたきっかけは、後継者が途絶えそうな文化を保全したいという気持ちを、日本だけでなく世界に伝えたいからなのかな、と勝手に解釈しました。(ゆえに、ただの金継ぎ本ではない(`・ω・´) )

2. なぜ自然の材料を使った修復がよいのかを語っている

現代の技術を持ってすれば、なんでも簡単にすぐに修理できてしまいます。しかし清川先生によると、化学的な修復は器をかえって痛めてしまい、寿命を縮めることがあるのだとか。そのため、清川先生が寺院や古いものを修復される時は、できるだけその時代にあったものを使って修復されるのだそうです。これまでたくさんの修復に携われれた職人さんがいうのですから、説得力があります。

そして昔の出土品に縄文時代の漆を塗られた土器や石器などが発見されていることからも、自然の漆がいかに強いかを示しています。

金継ぎで気になる漆かぶれについても、面白い表現で解説されています。
漆が肌に長時間付着するとかぶれることがあります。漆は「漆の木」の樹液なのですが、木の幹を漆掻き職人が引っ掻いて樹液が垂れ出た後、その掻き傷は次第に凝固します。その様子はまるで、私たちの血液のようだなと。漆の木も私たち人間と同じように、引っ掻いたら血を流し、その掻いた場所の血液が凝固し止血しますよね。漆の木はかぶれを起こさせるような樹液を出すことで、バイ菌や漆の木を脅かすような動物など外敵から身を守っているのです。

貴重な漆の木の樹液は、木1本から約200mlしか採れません。大切に使いたいですね。

3. 金継ぎ修理する時の心がけ

私はこれまで何名もの金継ぎ職人さんに直接インタビューをしてきました。その中で多くの職人さんがおっしゃって、私も肝に銘じていることがあります。それは、

金継ぎ修理が器より前に出てはいけない(目立ってはいけない)

ということ!
金継ぎは修復箇所を金色にするので、もちろん目立つのですが、そういう意味ではなく、金継ぎの継ぎ目のデザインをかっこよくしようと凝りすぎると、器と調和した景色ではなく、作者の意図が前に出過ぎて浮いたり、よけいダサくなったりするのです(*•ω•*)これは、金継ぎ修理を自分の手で行ったことのある人しかわからないかもしれません(笑)

たとえば、漆を使わないで接着剤で金継ぎ風に器をくっつけて修理する方がいます。それはそれで良いのですが、あまりに簡単にくっつけることができてしまうので、器本来の形を無視したり、「呼び継ぎ」と称して摩訶不思議な合体をしているのをよく見かけます。(呼び継ぎ自体は昔からある伝統的な手法で、それはそれで良いのですが。)その継ぎ目はとても盛り出て強調され、景色というか現代風アートみたいな感じです。
それも新しいデザインとして目を引きますし、個人の自由で斬新なのですが、職人が今まで受け継いできたしっとりした金継ぎは、また別の次元にある、違った趣きがあるのです。私はこの、控えめな金継ぎが好きです(笑)

千利休や古田織部など、15世紀ごろにお茶を大成して広めた茶人が金継ぎを愛でていますが、侘び寂びというか、新しくありつつ控えめな作品に、心動かされます。
私たちつぐつぐも、日々たくさん金継ぎ修理の依頼を受けていますが、あくまで修復の影役者として、控えめながらキラリと輝く最高の修理を、若い修理師の力を合わせて極めていきたいと思います。

「継 金継ぎの美と心 The Spirituality of Kintsugi」のレビューまとめ

自分の金継ぎ経験と照らし合わせて、私の勝手な感想になりましたが、この本を読んで心が現れる思いというか、これからも真摯に器を継いでいきたいなと思いました。
海外には英語で書かれたKintsugi本がいくつか存在しますが、日本初の本物の金継ぎ本として、清川先生の本が広まれば、日本の歴史と現状を知ってもらえて、素晴らしいことかと思います。

ということで、Yukiのこの本のオススメ度はMaxです(๑˃̵ᴗ˂̵)و.

清川先生のように超長い経歴や、大きな活動はできませんが、つぐつぐは小さな会社ではありますが「金継ぎ師になりたい!」という若くて熱意のある人材を育てて、金継ぎというニッチな分野の伝統を繋ぎ、少しでも漆芸産業に貢献できたらいいなと思います。

私Yukiの役目は、金継ぎの魅力を、今まで職人さんができなかったような表現方法で、世界に広めていくこと。
これからも頑張りたいと思います!!

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