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漆の採取方法 ?! つぐつぐの金継ぎ師が漆掻き体験!

2023年7月19日(水)、つぐつぐ金継ぎ師一同で茨城県常陸大宮市上檜沢にある漆畑を訪れ、漆掻き体験をした様子をご紹介します!

1. なぜつぐつぐ社内で漆掻きツアーを行なったのか?

金継ぎの重要な材料となる漆は、漆の木の樹液です。
漆の採取方法を実際に学び、その貴重さと漆芸産業の課題を学ぶことは、金継ぎに携わり教える身としてとても重要なことだと考えていました。

2. 漆掻き体験の様子

漆掻き体験①東京からどうやって行くの?

当日は朝8:45に上野駅集合。9時に出発する「特急ひたち5号」に乗り、まずは水戸駅へ。
水戸駅周辺でレンタカーを借りて、茨城県の奥深くへ、片道1時間半〜2時間移動しました。(代表の俣野が運転!)

(↑水戸駅)

途中、道の駅「奥久慈だいご」で昼食をとりました。

漆掻き体験②漆掻きに適した服装

漆の木は山奥にあるため、害虫に刺されないように、そして漆の採取中に漆液が皮膚についてかぶれないように、夏の暑い中でも長袖と厚いズボン、軍手で挑みます。

(↑この後、長袖と帽子で完全防御します))

だんだん慣れてきて、勇敢に山に入って、貴重な写真をたくさん撮りました。

漆掻き体験③漆の木の基礎知識

漆の木は落葉高木で、梨肌の灰色の樹皮があり、寿命は数10〜100年ほどです。
枝が分かれ、樹齢をかぞえることができます。
雌雄異株で雌花と雄花が別の個体につき、雌花には白い花が咲きます。
秋には硬い殻の実ができ、今では需要が減り生産は少ないですが、和蝋燭の原料とされました。

漆掻き体験④漆芸産業の現状

現在日本国内で流通する漆のほとんどは外国産です。
昭和10年代に中国やベトナムから漆が日本へ輸入されるようになり、第二次世界大戦後からは、中国、タイ、ミャンマーなどから安価な外国産の漆が日本へ大量に輸入され流通しました。

平成27年のデータでは、生漆の外国からの輸入が97%で、日本産はたった3%です。
このわずか3%の日本産の漆の約75%は、岩手県二戸市の浄法寺地区で生産しており、21万本の漆の木と、30人ほど の職人がいますが、職人の数は年々減少しています。
プラスチックや化学製品の台頭により、日本国内の漆の消費自体が減っているのも、衰退の原因の一つです。 

漆掻き体験⑤漆の木の生育から採取まで

漆の苗の増殖方法には、大きく分けて2種類あります。種を蒔き芽を出して育てる実生(みしょう)と、根の一部を分けて植えて育てる分根です。
苗を3年ほど成長させ、山や漆畑に植栽して成木にします。
成木を10〜20年育て、胸高直径が10〜20cm以上になったら、春から秋の間に漆の採取を行います。

漆の木の樹液を採取する方法を漆掻きといい、漆掻きを生業にする人を漆掻き職人、あるいは掻子(かきこ)と呼びます。

漆掻きは、養生掻きと殺し掻きの2 種類あります。 

養生掻きは明治時代以前によく行われていました。8 月下旬まで養生掻きにより漆を採取し、次回の採取まで1年以上漆の木を休ませ(養生させ)ます。漆の木を枯らさないように、少なめに傷をつけます。 

明治時代以降、漆の木から最後の1滴まで漆を採取し、切り落としてしまう殺し掻きが中心になりました。
殺し掻きの後、木は再生しないので、木を伐採し、残された切り株から新しく出てきた芽を育てる萌芽更新を行います。

漆掻き体験⑥漆掻きの時期と方法

漆掻きは春から秋に行います。 

6 月半ば頃に「目立て(めたて)」という、木の根本から20cmほどの高さの幹に小さな傷をつける作業を行います。
そして目立ての5日後から、前につけられた傷の上に少し長く傷を4〜5 日ごとにつけていき、傷から滲み出た漆をへらで掻き取って漆壺(掻樽)へ入れていく「辺掻き(へんがき)」を行います。
9月頃まで行い、20数回にわたって漆を採取します。 

私たちが訪れた山は平地で体験しやすい場所したが、通常は山奥にあり斜面のことも多いそうです。
それぞれの木が太陽の光を浴びられるように、木が等間隔に並んでいました。
そして、すでに目立てからいくつかの辺掻きがされていて、私たちはその上に一つ長い傷をつけて、漆を採取させていただきました。

(↑漆掻きの道具)

まず、鎌で漆の木の表面を削ります。

そして前回の傷の上を、掻き鎌で平行に長い線を掻きます。

その傷中にもう一筋引っ掻いて、滲み出てきた漆を漆を集めるへらで採り、漆を入れる漆壺(掻樽、タカッポ)へ集めます。

私たちが採取した漆は、漆の木から採れる最初の樹液で、荒味(あらみ)と呼ばれます。
それを濾過し不純物を取り除くと、私たちが金継ぎで使用する「生漆(きうるし)」になります。 
漆の木1本から採取できる漆は200g程度のため、漆は大変貴重な資源です。 

漆掻き体験を終えて(まとめ)

漆1滴を採るのがこんなに大変なんて、絶対に無駄にしてはいけないね、と全員が身をもって感じました。
また、これほど手間暇かかる漆の採取方法から、日本の漆の木と掻子の数が減少しているのは無理もないなと…。
それでも、漆の魅力が伝われば、今よりもっと漆の需要が増えて、漆の木をもっと植えて産業全体が盛り上がるのではと考えています。
私たちの経験が、つぐつぐに通ってくださる金継ぎ教室の生徒様への指導にも活かせるようにと考えています。

再びレンタカーで水戸駅へ移動し、17:27水戸駅発の特急ひたち22号に乗って、上野駅へ。
1日お疲れ様でした。

つぐつぐは今年で、設立から4年目になりました。
社員一人一人が成長して、お客様に還元できるように、つぐつぐでは定期的に社内で、他社にはないユニークな研修・社員教育を行っています。

これからもまた新しい発見があれば、ご紹介しますね!

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