金継ぎ師になるための修行日記

【金継ぎの注意点「漆かぶれ」】うるしは触っちゃダメ!皮膚のかぶれと薬とその対処法

漆かぶれとは?その原因

漆(うるし)かぶれは、漆の主成分である。ウルシオールが皮膚に付着することによって引き起こされる、接触性の皮膚炎のことです。いわゆるアレルギー反応のことです。
表皮からウルシオールと呼ばれる成分が侵入し、それを守るための防御反応として炎症が起こってしまいます。

Yukiが体験した漆かぶれ2週間実録ブログ↓

漆器って安全?

皮膚に付くとかぶれるなんて、、漆を使った食器って危険なのでは? 金継ぎのときにも漆を使うから、人体に良くないのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうわけではありません。

漆は、「液状のときに」アレルギーを引き起こします。器として使用する時点では、漆はしっかり硬化しているから安全というわけです。(もっと正確に言うと漆自体は年単位で更に硬化していく働きがありますが、作品として完成している場合はすでに人体に影響を及ぼさない程度はしっかりと硬化が済んでいます)。

ですから漆かぶれに注意しなくてはならないのは、「液状」の状態の漆を扱うとき、ということになります。

なので金継ぎをするときにはうっかり漆塗料に直接触れてしまわないように、ゴム手袋などをして手を保護する必要があります。手部だけに付着するとは限りませんから、作業中は長袖の洋服を着て肌の露出を避けアームカバーをし、髪につかないようまとめておくとより保護に役立つでしょう。

特に薄着の夏場は要注意です。

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漆が付着してしまったら? 

漆が皮膚に付着した時は、油(中でも酸化しにくいと言われている菜種油・キャノーラ油が最も良いですが、なければサラダ油)でその部分をすぐ拭き取り、石鹸でよく洗い流してください。 

付着してもかぶれないこともある

(↑漆が付着した手)

この写真画像は、手袋が破れていることに気づかず、指先ついてしまった漆です。金継ぎではなく、「拭きうるし」という、たくさんの漆を塗り広げる作業中でした。気づいた後、すぐ油で拭き取り石鹸と流水で洗い流しましたが、遅かったため取れず、2〜3日間うるしの茶色いシミが取れませんでした。その後、毎日よく洗うことを繰り返したところ、痒みもなく、自然にきれいにとれて、奇跡的にかぶれませんでした。

注意は必要ですし絶対手袋をしたほうが良いのですが、手のひらは、手首や腕などの皮膚の薄い部分に比べ厚いので、一応はかぶれにくいそうです。また、漆かぶれは何度も漆に触ることで、起きにくくなるという考えの方もいますが私が仲の良い職人さん何名かに聞いたところ、やはり漆に触ると、職人さんでも定期的にかぶれるそうです。

金継ぎの技術が優れているので、同じ作業をしていても、職人さんの方が漆に接触しないように上手く行えるので、実際には手袋をされずに漆を扱う職人さんが多いです。

かぶれやすい季節・条件

私的な見解ですが、冬よりも夏の方がかぶれやすいような気がします。理由は、暑いため半袖で作業する方が多く、完全に固まった(と思った)漆を研いで、その粉が机の上におち、知らず知らずのうちに漆の粉が手首についてかぶれが発症したり汗をよくかくため、漆の粉が湿った皮膚に接触し、付着しやすい、などが可能性として考えられます。

また体調や体質も、皮膚が漆負けしてしまうことの要因の一つだと思います。
私は子供の頃からアトビー性皮膚炎を患っていて、普通の人より皮膚が乾燥していて敏感だと思うので、日頃から皮膚の保湿は大切にしています。しかし、私は夏にも冬にも、腫れ上がるようなひどいかぶれを経験したので、漆が皮膚に付いたら季節に関係なくかぶれる可能性があると、自分の経験から断言しています。

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漆かぶれの薬

漆かぶれを起こしてしまったら、皮膚科医に相談してください。 (皮膚科でも「うるしにかぶれたんです」といってピンとくる先生が少ないくらいですので、内科よりも、皮膚専門の科に行くことをお勧めします)

基本的にかぶれを早く治す薬は今のところありませんが、「ステロイド」「抗ヒスタミン剤」などの処方をしてもらい、かゆみや激しい炎症に対処することもできます。

強いステロイドは市販薬にはなく、皮膚科医の先生による診断と処方が必要です。私は2回もひどい漆かぶれになったのですが皮膚科で強いステロイドのクリームを処方してもらいました。
1日に数回、皮膚炎を起こしている場所に塗って様子を見ましたがすぐに効果が出ず、完全に治癒するまで1〜2週間かかりました。

しかし、私の弟子2名が漆かぶれになったとき、ステロイド剤を塗ると、ぶつぶつ・赤くなった炎症が広がることなく1日で炎症が引いて、2〜3日で治ったというケースもあります。人によって薬が効くか、治らないかは、差があるようですね。

漆かぶれはうつるのか 

漆かぶれはまず人から人には感染しません。漆かぶれが起こっている状態ではすでにその人の表皮からウルシオールが侵入している段階なので、かぶれ自体や水泡が他人への感染源になることはありません。

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漆かぶれが治るまでの期間

早い人だと3日ほどで完治し、症状がひどいようだと2週間ほど治るのにかかる例もあります。また、漆が付着した部位がかぶれてくるのに1週間ほど時間がかかる場合もあります。(潜伏期間があるのでしょうか・・・?)
付着した漆塗料がそこまで多くなくても人によっては過敏性を持っていたりするので、そうなるとより強い炎症反応を引き起こして激しいかゆみが続くこともあるでしょう。

いずれにせよ、ピークを過ぎれば痕は残らずにすっきりと元通りになるのが特徴です。皮膚科に行かずに放っておいて治す、という人も多いでしょう。

また、かぶれ(ウルシオールの侵入)を繰り返しているうちに、耐性ができてかぶれにくくなるのか?という質問をよく受けますが、ほとんどかぶれにくくなるという人もいれば、うるしに触る度に、定期的にかぶれるという人もいます。私がひどい漆かぶれ(漆負け)になった時の症例経過を、たくさんの写真を撮って公開した記事があります。興味がある方は、下記の記事も参考にしてください!

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いずれにせよ、漆かぶれにならずに、楽しく金継ぎを楽しみたいもの。
できるだけ漆が皮膚につかないように、万全の準備と皮膚の保護をしながら、金継ぎしましょう。でも、もし漆が皮膚に付いてしまったら、焦らずに油ですぐに拭き取り、石鹸水でよく洗い流しましょう。
そして、漆かぶれになってしまったらすぐに皮膚科のある病院・クリニックに行き漆が皮膚に付着してしまったことを伝え、正しい処方をしてもらうようにしましょう。

著者:俣野由季

現在起業から約1年経ちますが、金継ぎキット販売やYouTube動画配信を通じて、金継ぎ初心者の方からたくさんメッセージをいただき、 これまでは一人一人にお返事のメールしていましたが、やはり不安なので教室で先生にみてもらいながら金継ぎをしたい!というご要望にも応えるべく、本格的に金継ぎ教室を開講することにしました!
私は親が代々教師の家系で、私自身も人に教えるのが大好きなので、 自分が初心者として金継ぎを学んでいたときの気持ちを忘れずに、初心者の疑問点をできるだけ分かりやすく説明して、金継ぎを楽しんでもらえる教室にしたいと思っています!

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