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つぐつぐで働く金継ぎ師の毎日【金継ぎ未経験・中途採用編】

つぐつぐでは、金継ぎ教室・ワークショップ・そしてプロ金継ぎ師による器の修理など、金継ぎに関する様々な活動を行っています。

つぐつぐの一員として働きたいと興味を持ってくださっている方のために、金継ぎ未経験で入社した時の育成の流れや、毎日どのような業務を行っているのかリアルに知っていただくため、未経験で入社したAさんのモデルケースを紹介させていただきます!

金継ぎ未経験で中途入社したAさん

漆や金継ぎに携わったことはないけれど、手先が器用なAさん。

金継ぎキットを母親にプレゼントしようと思い、金継ぎキットを探してつぐつぐのサイトを見ていたところ、つぐつぐが金継ぎ師を募集していることを知りました。

当時勤めていた会社ではプロジェクトを管理し、社内の各部署とコミュニケーションをとりながら商品制作を完了させ、お客様に商品を期日までに届ける、責任ある仕事をしていました。

履歴書に「納期管理」「人とコミュニケーションをとって仕事をしてきた」ことが書かれているのに目をひかれました。つぐつぐはきちんとした会社なので、そういった社会人経験も重要だからです。大学のあと、その専攻で学んだ手先を使った趣味を続けていました。業界は違えど、つぐつぐで金継ぎ修理を責任と納期を守って遂行してくれるのではと思い、面接に至りました。金継ぎはそう簡単に上達しないということも伝えましたが、固い意志が伺えました。

社長コメント

面接は、代表との面接だけでなく、後に上司となる部長2名との面談もあります。面接の中で、黙々と手作業をするのが好きだということもわかり、きっと金継ぎが好きになるだろうと思い、採用されました。

入社1ヶ月目

つぐつぐの基本シフトは9:30〜18:30で、真ん中に1時間休憩時間があります。
9:20ごろ、余裕を持って出社し、エプロンをして勤務できる準備をし、指紋認証で勤務開始。店舗のお掃除と朝礼から始まります。

まずは金継ぎができるようにならなければ仕事にならないので、つぐつぐでは、先輩金継ぎ師に教えてもらいながら、接客と、それ以外の時間は金継ぎして過ごします。(7年間皿洗いして8年目にやっと寿司を握らせてもらえる!というのではなく、最初から数をどんどんこなして、特訓です!)ずっと先輩が隣にいるわけではないので、分からないことは自分から聞きにいくのも重要です。

お客様から預かった器は、ミスがあってはいけないので、触ることは許されません。そのため、ワークショップで使用する器を、仕上げの一歩手前の「中塗り」まで行うことがメインで、月30枚以上のノルマがあります(先輩金継ぎ師なら中塗りまでの器を1ヶ月100枚くらいはできるのですが、最初はクオリティも重視して優しめではありますが…)。最初はペース配分がつかめず、月末に締め切りが近くなり、残業が増えました。金継ぎってこんなに大変だったの〜(汗)部長によるクオリティーチェックを全部合格させなければいけないので、ただ金継ぎすればいいというものではありません。(しかし、2ヶ月を超えると、どれだけ時間がかかるかがわかってきて、だんだんペースがつかめてきます)

また金継ぎの猛特訓をしている期間は、できるだけ店舗にいて、プロ金継ぎ師がどのように講師として教室で教えているかも見て学んでいます。自分も半年後にはデビューすることを見据えて、耳に入ってくる会話から、金継ぎに関するよくある質問・背景知識を知ります。

金継ぎ以外に行うこととして、金継ぎ教室の生徒様がお見えになったときの受付業務なども行い、つぐつぐの全体の業務に慣れていきます。また、最初の半年間はほとんど売上を作ることができないので、できるだけ先輩の手伝いをしたり、修理受付カウンターをしてくださっている無印良品に預けられた器を週1回とりに行ったり、みんなに貢献できることを見つけて行います。初月の後半には、会社の基礎知識テストもあります。つぐつぐの企業理念やルール、そして今後一人でお店番をしたときに商品の説明や会社のことが答えられるようにするためのテストです。

入社前に考えていたより接客業務の割合が高く、たとえば来客や電話・メール対応などの接客業務の方が比重が高いように感じました。ですので、接客経験があったり、人とコミュニケーションを取るのが上手い人がよいと思います。金継ぎ「だけ」ができると思っている方は、業務が金継ぎだけではないことを、事前に知っておいた方が良いと思います!

Aさんの本音

接客業務に金継ぎに、たくさんのことを学ばなければいけない入社1ヶ月目が一番大変ですが、最短で金継ぎ師になれる環境はここしかありません!会社としても全てを新人に投資しますので、ぜひ早く一人前になってほしいです!

社長コメント

入社2ヶ月目

金継ぎ猛特訓で「中塗り」まで一通りやり方がわかってきたら、販売するための金継ぎ器を手がけることが許されます。いままで中塗りまでしかさせてもらえなかったのですが、むしろ中塗り時点のクオリティが100点であれば、仕上げで失敗することは少なく、高価な金粉を無駄にしません。金粉を蒔いて仕上げた後にデコボコが見つかりお客様に出せない状態と判断されやり直しになると、高価な金粉を無駄にしてしまうので、それを防ぐため、金継ぎ事業部長から全ての器に対し、厳しい中塗りチェックが入ります。中塗りチェック合格後にやっと金粉を蒔くことを許されます。1ヶ月目ではまだやり直しがあっても許されますが、後々にはこのチェックで差し戻しになったら減点評価になります。なんでもかんでも部長に提出してはいけないのです。これにより、100%のクオリティがどういうものかという「金継ぎ師の目」も養われ、自分が「これは100%の品質」と自信を持ってから部長に提出します。

(↑黒い部分が「中塗り」)

また、つぐつぐは金継ぎ修理を依頼されることも多く、破損した器を見極め、修理計画をイメージし、お客様に色の提案と修理見積金額をお出しします。まずは決められた見積ルールを学びますが、持ち込まれる器の破損は全て異なり、簡単なものからバキバキまで…。まずはお客様のいないところで見積もりができる特訓を行います(恵比寿店の近くに、バックオフィスがあります)。お客様がいない場所で落ち着いて正確に見積もりができるようになったら、写真で依頼される仮見積もりにも対応します。実物よりもっとわかりづらいです。そしていよいよ店頭で、実際にお客様が持ち込んだ修理依頼品の見積もりを行います。必ず先輩金継ぎ師が立ち会って行い、Aさんが算出した金額が正しいかその場で確認されます。こうやって、訪問される本物のお客様10名に対し連続で正しい見積もりが出せたら合格し、やっと見積もりの独り立ちできます。8回くらい連続でOKが出たのに、次に持ち込まれた器が難易度が高いもので、不合格、また1からやり直し・・・となることもありますが、逆にこの期間にできるだけ多種多様な器の破損を吟味する経験しておくことで、その後一人で行うときの自信につながります。慎重派のAさんは、見事2ヶ月目にクリアすることができました!

金継ぎ特訓では、金蒔き仕上げの練習も兼ねて、販売する器を作りました。Aさんが金で仕上げた器は、店頭に展示して1週間で、海外から来たお客様に購入されました。なんだかとってもうれしい!

Aさんは丁寧に作業するので、仕上げた器はとても美しかったですが、最初は金継ぎの「スピード」が遅く、先輩の何倍も時間がかかります。

細心の注意を払うところと、そうでもないところはどこなのかを把握し、スピードがついてくるよう、辛抱強く成長を見守っています!

社長コメント

入社3ヶ月目

ここまで毎日の大半は金継ぎ作業でしたが、部長から、シンプルな破損のものであればお客様の器を修理して良いと許可が出ました。(この許可が降りる時期は人によって大きく違います)ただし、先輩金継ぎ師が必ず横についていることと、部長が選んだ器のみ手がけることができます。お客様の大切にしている器だと、より一層の緊張感が生まれます。

東京で金継ぎワークショップ(つぐつぐ)

そして、1時間完結の金継ぎワークショップの講師デビューのための特訓も始まります。すでにみっちり金継ぎを練習してきたのですが、人に教えることで改めて知識が深まります。1時間完結のため流れは決まっていますが、いただく質問にはプロとして的確に回答する必要があります。そのため、ワークショップデビューの前には、よくある質問と答えを叩き込みます。将来、金継ぎ「教室」の講師としてもデビューしますが、教室では生徒様が自分の器を持ってきて10回以上かけて修復していくので、一人一人の器に合った指導を最大6名同時に行うのは難易度が高いため、先にワークショップの講師としてデビューし、経験を積んでから、教室講師としてデビューする流れになっています。つぐつぐは日本人と外国人の両方に金継ぎワークショップを提供しているのですが、最初は日本人に日本語で教えられるようになり、将来的には英語で外国の方にも対応できる目標を立てます。

ところで、つぐつぐには1日に1回くらい、外国の方が突然店舗に訪れます。金継ぎキットや金継ぎされた器を購入したいと思ってこられる方が多いですが、英語の話せないAさんは最初はドキドキ。しかしあまりにも外国の方がよくこられるのと、他の金継ぎ師も決して英語が堪能ではない中、翻訳アプリなど駆使して対応したり、英語の資料も豊富にあるので、それを見せて説明します。

入社4ヶ月目

先輩金継ぎ師の補助をしながら金継ぎワークショップに慣れてきましたが、ついに目標通り、一人でワークショップ講師を行うデビューを果たしました!そして次の目標は、金継ぎ「教室」講師デビュー。未経験の場合、教室の講師デビューは7ヶ月目になるので、それに向けて毎日金継ぎの技術を磨きながら、修理のご依頼の見積もりをしながら、ワークショップの講師を行いながら、慣れていきます。それらの業務を通じて、技術だけでなく、いろいろなタイプの破損や器の種類別注意を学びます。金継ぎに終わりはないのです!

入社5〜6ヶ月目

より難易度の高い破損器を修理したり、ガラスの修理の経験を増やしたり。基礎的なことは全てできるようになっているので、多種多様な破損・材質に対応できる金継ぎのプロになれるよう、日々修理業務をしながらスキルを磨きます。スピードも最初より格段に上がってきましたが、まだまだ先輩には及びません。あとは金継ぎ「教室」講師デビューが控えています。デビューするには先輩の前で行う講師テストに合格しなければならず、また実際のお客様に教える先輩の補助も行って経験を積みます。

金継ぎ修理、金継ぎワークショップ講師、金継ぎ教室講師、これら全てが6ヶ月以内にできるようになり、かつ勤務姿勢・態度つぐつぐに相応しいものであれば、7ヶ月目より正社員になります。

数年経つと金継ぎのスキルがかなり上限に達してきます。余裕が出てきたら月に2回、漆芸の研修にも参加でき、さらに幅広い技法を身につけることができ、それをまたお客様に教えてファンを増やしていきます。

また一通り金継ぎスキルが身に付いたら、海外の方にも金継ぎワークショップあるいは教室で教えられるように、英語の練習もコツコツと積んでいきます。日本人だけでなく世界中の人に金継ぎの魅力を伝えられる会社を目指しているので、避けては通れない道なのです。しかし、歴代、最初から英語が堪能な社員はいなかったのですが、すでに3名以上が英語デビューを果たしています!希望があれば、オンライン英会話を会社負担で受講できる福利厚生もありますが、それを使わずに、何か言いたいことがあればgoogle翻訳で調べて自分が使える単語を増やしていったりして、自分でできるようになった人もいます。最近は便利なアプリもたくさんありますね。またつぐつぐにある資料はほとんど全て日本語と英語が併記になっています。金継ぎキットの手順書とYouTube動画も日本語・英語があるので、金継ぎに関する英語が知りたければ、いつでも触れられる環境にあります。

最初の半年は金継ぎの技術習得でいっぱいっぱいですが、それができるようになっても、飽きることなくどんどん成長し続けることができる環境です。

最後に

つぐつぐはこの記事を書いている時点で、創業してから4年目が終わろうとしています。

伝統工芸の業界の中で、漆を使った手仕事である「金継ぎ」でお客様に感動を与えながら、雇用を生み出し、お客様も社員も豊かにしたいと思っています。これからも個人の成長と事業の成長をともに目指して頑張ります。

一緒に金継ぎの魅力を世界中に広めたい、プロの金継ぎ師になりたいと夢を持って応募してくださる方を、お待ちしております!

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