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最短でプロ金継ぎ師になった、金継ぎ未経験・社会人2年目でつぐつぐに中途採用された社員のこれまで

つぐつぐを創業して1年目に入社した、超初期メンバーのEさんは、現在、つぐつぐ4年目になります。

努力家で、練習によりみるみる金継ぎの技術を身につけ、現在はつぐつぐの金継ぎの質を担保する部長として活躍する、なくてはならない存在です。

そんなEさんの、つぐつぐでの仕事ぶりと、これまでの成長の過程を紹介します。

金継ぎに興味を持ったきっかけ

Eさん:なんとなく、金継ぎというものがあることは知っていました。

専門学校を出て就職した会社で2年目、コロナ感染症が始まり、社内で仕事がパタっと減りました。以前より手仕事に憧れがあったので、転職も見据えて伝統工芸についてインターネットで調べていたときに、金継ぎを見つけました。「こういうのを金継ぎっていうんだ〜」と理解した瞬間でした。

たくさんの伝統工芸がありますが、工芸は何かを作り出すものです。後継者不足といわれていますが、モノがありふれている世の中で、いま自分が手仕事で何かをイチから生み出す必要があるのか、そしてそれは求められているのか?と自問自答しました。

一方金継ぎは、新たにモノを生み出すわけではないけれど(もともと持っていた器が割れた時の修理なので)、手仕事であり、伝統工芸です。そういった側面に惹かれ、金継ぎをやってみたいと思いました。その後金継ぎを習い始めるのですが、習う前から「いつか金継ぎを仕事にしたい」と思っていました。

「金継ぎ師」になるにはどうすればいいのかをインターネットで検索したところ、たまたま「金継ぎ女子」のサイト(つぐつぐの代表俣野が金継ぎ師になるまでのストーリーを書いたブログ)を見つけ、そこに答えが書いてありました。

▼その時見た記事はこちら

Eさん:この記事に出会い、未経験の自分でも金継ぎ師になれると思いました。感謝の気持ちを伝えたく、メールをしました。

knot perfectのサイト、ユキさんのブログを拝見して思わずご連絡を差し上げました。
突然のご連絡失礼いたします。

私は約1年前から、金継ぎを職にしたいと考えていました。ですが、ネットで調べたり教室の先生から話を聞く限り、金継ぎを本職としている人はいないとの情報しかなく、悩んでおりました。
そんな中でユキさんの活動をネットで拝見し、とても背中を押されました。

私は芸大卒でないし、知識も全くないのに、(知識はこれからつけていくとしても、)好きという気持ちだけでやっていけるのか、不安でした。

ですが私と同じように、全く違う業界から金継ぎへと転身されたユキさんの存在は、私の不安を軽くしてくださいました。

そのお礼を伝えたく、ご連絡させていただきました。
ありがとうございます。

来月から、金継ぎ教室に通おうと考えています。
私も早くプロになりたい気持ちが強いので、ユキさんのようにスピード感をもって、これから頑張ろうと思います。

お忙しいと思いますので、もちろんご返信は不要です。
一方的なご連絡失礼いたしました。

これからもユキさんのご活躍、お祈りしております。

Eさんが最初に俣野に送ったメッセージ (2020年11月17日(火))

(ちなみにつぐつぐは最初から”つぐつぐ”だったのではなく、最初は「kNotPerfect(ノットパーフェクト)株式会社」として創業し、2年目に社名を「株式会社つぐつぐ」へ変更しました)

そのメールを俣野が読み、まだ創業したての自分が書いた記事を、誰かが読んで役に立っていることがうれしく、下記の返信メールを送りました。

メッセージありがとうございます!私のつたないブログを読んでくださる方がいたなんて、とてもうれしいです!

お礼なんてとんでもないです。私も正直時折不安になるので、私を知ってくれている人、応援してくれる人がいるなんて、もっと頑張ろうという前向きな気持ちになりました^^ありがとうございます!

そうですね。芸大卒でもないし、サラリーマンしていた方が余程生活安定していましたが、全てを捨てて会社を立ち上げたので、もう後戻りできないです笑。

金継ぎ教室頑張ってくださいね!金継ぎのやり方は人によって千差万別なので、私は「なぜこれをするの?これを使う理由は?他の本では使ってないけど?」など先生にいちいち聞くうるさい生徒でした笑。今も師匠に聞いています。

(中略)

綺麗に仕上げようと思うと地味に大変なポイントがありますね。

私みたいに急がなくても、月3回で3年かけてプロになられた方もいるようですので、ご自身にあった方法で^^

ちなみに全国の金継ぎ職人13名以上にインタビューしましたが、その半数は芸大卒でもない一般の方でしたので、実はバックグラウンドはあまり関係ないです。

芸大卒でなくても、やる気さえあれば、私が金継ぎを教えるので、並行してうちで先生をやってくれる方いないかなーという思いがあります。

でもいつかは独立されたいだろうと思うので、その時はあたたかく見送ります^^

なんて、勝手に自己中心的な妄想を描いてしまいましたが

私が何かサポートできることがあれば、気兼ねなくご連絡ください!

(中略)

一緒に金継ぎを盛り上げましょう!

俣野 由季

俣野からの返信

そして俣野からの誘いで、Eさんは2020年12月から東京・四ツ谷で限定2ヶ月開講する金継ぎ教室に通うことになりました。

つぐつぐに入社する

コロナ禍にひっそりと金継ぎの会社を起業したつぐつぐ。最初は店舗を持たず、俣野の家である小さなアパート(6畳の1K)で金継ぎキット(のちに「つぐキット」として商標を取得)を手作りして通販で販売することからスタートしていました。

つぐキット販売から半年経つと、俣野一人では作りきれないほどの売れ行きとなり、初めて人を雇うことになりました。Eさんは限定開講の金継ぎ教室で金継ぎを学びながら、俣野の家でつぐキットを作成(粉を瓶に詰める)する仕事を行いました。(Eさんは俣野の部屋に来て、俣野がすごくミニマリストで、家にモノが全然ないことに驚いたそうです。)Eさんは手作りで無心でつぐキットを作っていました。どれだけ早く作れるか?というゲーム性を自分の中に持たせて、粉を詰めていたそうです(笑)

金継ぎ教室では、Eさんは金継ぎには行程がいくつもあることに驚きました。頻繁には通えなかったため、「まだ次の工程に進めない…」と、ちょっとうずうずしていました。しかし、黙々と作業するのは楽しく、習い事というものをこれまでしたことなかったので、毎回金継ぎ教室へ行くのが楽しみでした。

↑Eさんが完成させた、欠けの金継ぎお茶碗

Eさん:当時、大きく破損した器を持っておらず、お茶碗に小さい欠けがあるのを金継ぎしました。破損度が小さすぎて、あまりやりがいが感じられなかったので、その後は俣野が提供した割れた器を練習として金継ぎしました。

そんなある日、つぐキットが雑誌Hanakoに掲載され、みんなで「ワーイ!」となりました。その後、つぐキットも会社もどんどんメデイアに掲載され、大きくなっていくとは知る由もない時代でした。

▼つぐつぐスタッフ全員で大喜びした、Hanakoにつぐつぐが掲載されたときの記事

つぐつぐが初めて店舗をオープン

Eさん:四ツ谷の小さなアパートからの、店舗出店…すごいと思いました。これからが楽しみ、という感じでした。そして、自分の中でやっとやりたいこと見つけられたので、「早くそっちにいきたい…!」という気持ちでした。

2021年2月13日、つぐつぐ広尾/恵比寿店が正式にオープン。Eさんは翌月から正式につぐつぐに入社しました。店舗をオープンした時は、つぐキット販売(主に通販)と教室だけを行っており、金継ぎ修理の受付は行なっていませんでした。俣野が金継ぎ教室の講師を行い、Eさんは教室の受付業務と、金継ぎキットの作成・梱包・発送をメインに行いましたが、18:30の勤務終了後、終電前までつぐつぐの店舗に残って、夜な夜な一人で金継ぎの練習をしました。

Eさんは、「自分がこれだけ熱中できることに出会えたのがうれしく、ちょっとずつ上達しているのが目に見えて分かるのがうれしかった」と当時を振り返ります。

つぐつぐがメディアにどんどん取り上げられる

Eさん:店舗がオープンすると同時にnews zeroに取り上げられ、その翌月には日テレに取材され…その後もメディアがひっきりなしに取材しにきました。つぐつぐが会社として大きくなり、知名度が上がっていくことを、実感していました。

金継ぎ教室の生徒さんに「テレビに出ているのを見たよ!」といわれるので、すごいな、と思ってきました。そして、どこまで大きくなるんだろう…という感じでもありました。

入社6ヶ月目、金継ぎ教室の先生としてデビュー

当時はコロナ禍でもあったため、非対面のオンライン金継ぎ教室が世の中のニーズに合っていると考え、店舗での対面の金継ぎ教室に加え、オンライン金継ぎ教室も開始しました。

オンライン金継ぎ教室はマンツーマンのため、一人に集中して教えることができるので、Eさんの最初の金継ぎ講師デビューはオンライン金継ぎ教室からでした。お客様が見えない画面外で、実は自分の横に先輩がついて、何かあった時にすぐサポートできる体制で初めてのオンラインレッスンを行いました。逆に、先輩に全てを聞かれていることで緊張しました。オンラインでは、こちらが作業をやって見せることを意識します。お客様の手元は、画面越しのため残念ながらクリアには見えないので判断が難しいですが、難なく講師デビューを果たしました。その後も、生徒さんが満足する教室ができるよう、わからないことは自分で調べて、めちゃくちゃ勉強しました。基本的なことは全てネットで検索すれば見つかる時代です。ネットで調べても分からなかったら先輩に聞く、というようにしていました。また、実際に茶道具展などで昔の金継ぎを見てみるとか、伝統工芸展で漆器を見るなどして、知見を広げました。

その後、店舗での金継ぎ教室講師としてもデビューしました。2024年現在は生徒数も増えて、毎回5-6名/クラスと満席近いことが多いですが、2021年初めの生徒数は1-2名/クラスと生徒数が少なかったので、2024年現在の新入社員より落ち着いて講師ができていたと思います。

俣野:金継ぎ講師デビュー前、Eさんがとても緊張して不安がっていた様子をよく覚えています。その頃Eさんはまだ22歳。ほとんどが自分より年上となる生徒さんに、先生としてきちんと振る舞えるかどうか心配だったようです。しかし、初めての講義を終えた後、自信にみなぎっていました。「できた」という瞬間でした。もちろん「あの時、こういう風に言えばより良かったな」ということはあったようですが、その後悔を次の教室で活かし、どんどん自信がついていきました。

金継ぎを超えて、漆芸を学びたい

金継ぎは漆芸のほんの一部の技法です。金継ぎの技術がみるみる成長するEさんは、金継ぎを超えてもっと漆芸を学びたいと思うようになりました。2022年から、漆芸歴の長い外部講師をつぐつぐへお招きして、拭き漆やその他の漆技法を学ぶ社員研修がスタートしました。Eさん・社員が学んだ拭き漆は、その後生徒さんにも教えられるようになり、金継ぎだけでなく幅広い漆芸を教えられる教室になっていきました。

入社9ヶ月目、金継ぎ修理依頼が増加する

恵比寿店オープン当初は、金継ぎ修理を受け付けていなかったのですが、店を通りすがる人から「こんなところに金継ぎのお店がある!」という認知が広まり、突然割れた器を持って店舗を訪れ「これ修理してくれないかな?」と言われることが増えました。金継ぎ師が集まっているお店のため、できないとはいえません。引き受けることになりました。

いくらで修理するか?というのも決めていきました。当時は修理金額の決め方も手探りで、今考えると破格の安さだったと思います(笑)手間暇・かかる時間と修理金額が見合っていないことに後で気づき、改訂を重ねて今に至ります。

また、お皿などの食器の修理依頼が来ることと予想していましたが、両手で持つのがやっとの大きくて重い盆栽鉢など、大型の品物も来ました。漆風呂(漆を乾かすための棚)に入らず、大きな段ボールを使ってやっと乾かしました。これが冬だったので温度が低くて乾かすのに本当に苦労しました。

2021年9月、新宿にある無印良品から金継ぎ修理に関する業務提携のお話をいただきました。SDGsな店舗を目指しているとのことで、お客様が無印良品のカウンターで破損した器を預け、つぐつぐがそれを金継ぎ修理してお返しするという内容です。初月はそれほどお預けがなかったですが、年末になると突然お預けが増えました。この頃から、金継ぎ修理依頼が爆発的に増え続け、つぐつぐのメイン事業となっていきました。

このままでは金継ぎ修理に手が回らないため、2022年2〜3月にかけて、3名の新しい金継ぎ師候補を採用し、Eさんがその新人3名教育しました。恵比寿店オープン当初は、金継ぎを練習するための器すらなかったのですが、気づけばお客様に完成まで数ヶ月お待ちいただくほど修理依頼が増加しました。(その後もご依頼は増加の一途を辿り、2024年4月現在、約1年待ちとなっています…)つぐつぐの金継ぎ師はが修理に追われる日々が、今も続いています。

入社1年後、浅草店(2号店)がオープンする

2022年5月、つぐつぐが2号店である浅草店をオープンすることになりました。

その前月から、浅草店の新規メンバーが数名入社し、Eさんが指導することになりました。
新入社員の一人が、前職では輪島で蒔絵師をしており、蒔絵(金継ぎの仕上げの工程)が飛び抜けて上手く、今までで初めて、自分より技術が上の新人が入ってくることに、ワクワク感と共に、すぐに自分を越えていってしまうだろうという緊張感がありました。

しかし、経験値が高い後輩は話しやすく、すぐに打ち解け、逆にコツを教え合うWin-Winの関係となりました。これまでもEさんより年上の後輩ばかりが入社しましたが、Eさんは年齢関係なく指導していき、社員はみな、友達のように仲良くなっていきました。つぐつぐに入社する人は、みんないい人ばかりです。

ガラス金継ぎの受付開始

金継ぎは従来、磁器や陶器に行うものでしたが、最近は高価なグラスも多く流通していることから、ガラス食器の金継ぎ依頼も多く相談されました。このニーズに応えるため、つぐつぐではガラス金継ぎも行うことを決意。10月にはガラス金継ぎを多くこなしている職人さんのいる石川県に行き、直接学び、つぐつぐで正式にガラス修理も承ることになりました。(ただし、破損状態によっては、修理ができないこともあります)

漆芸に長けている職人さんでも、ガラスの金継ぎは受け付けない方も多いので、つぐつぐは金継ぎ店の中でも幅広いサービスを提供していると言えます。

組織図と社内評価制度の変更

金継ぎ修理依頼はどんどんと増え、つぐつぐの金継ぎ師の人数も増えていきました。しかし、金継ぎ師の人数が増えても忙しさは減ることがなく、つぐつぐのオペレーションを大きく見直すことになります。大きな変更の一つとして、2022年7月から、金継ぎ修理が「担当制」になり、きちんとした評価制度が生まれ、組織図も作られました。それと同時に、Eさんは金継ぎ事業部長へと昇格しました。

これまで器の修理は、同じ工程を行う器を集めて一気に作業する方法をとっていました。つまり一人の金継ぎ師が、同じ工程にある複数の器全てに対し、その工程だけ作業するのです。それを、一人の金継ぎ師が一つの器を最初から最後まで金継ぎするような、器の担当制へと変更したのです。一見、同じ工程にある器全てに同じ作業を一気に行う方が効率が良いように思います。しかし、一つの器を最初から最後まで金継ぎ修理する方が、責任感がより強くなり、(制度を変更したその時は時間がかかりましたが)最終的にスピードがあがりました。それだけでなく、破損度が高く難易度の高い器を避ける気持ちがなくなり、金継ぎ師のスキルも上がりました。さらに、金継ぎ師個人の1ヶ月の修理時間を計測することで、客観的にどの金継ぎ師のスピードが早いのか、遅い金継ぎ師はどこに弱点があるのかを分析することができ、より正確な評価と指導に結びつきました。

変更した時は金継ぎ師は苦しかったと思いますが、後から振り返ると、同じ工程を行う器を集めて一気に作業する方がしんどかったと、Eさんは今振り返ります。次の工程へ進むという判断をする者がおらず同じ作業を繰り返し行なってしまうことがあったり、他の人が前に作業した器を次はどこを重点的に作業すれば良いのか把握するのに時間がかかるなどありました。また、誰のスピードが遅いのか、誰に責任があるのかが見えづらく、みんなが終わらないと退社できず、自分の作業が早く終わったとしても全員が終わるまで手伝うために、先に帰るのが申し訳なくなるのです。
難易度の高い器は、Eさんが部長ということもあり、自分が積極的にやらなければと思って取り組んでいました。今の担当制の方が、自分の担当する器を自分のペースで進めれるので気が楽です。

担当制になった当初は、金蒔き(仕上げ)だけは元蒔絵師の社員が行なっていましたが、それも数ヶ月すると廃止し、担当した器はその金継ぎ師が最後まで仕上げることになりました。仕上げは失敗すると非常にイタく、時に避けたい気持ちもあるのですが、逃げずに最後までその器と向き合うのが当たり前になり、つぐつぐの金継ぎ師全員のスキルが向上しました。

2023年8月は、年末・正月に大量にご依頼いただいた金継ぎ修理依頼の納期月で、つぐつぐ史上最も忙しかった時期でしたが、みんなでなんとか乗り越え、9月に一息つきました。

1時間完結金継ぎワークショップの開始

修理依頼の受付は相変わらず多かったですが、やっとコロナの落ち着きが見え、2023年10月から海外の方がビザや制限なしに来日できるようになりました。そのころから、海外の方からの金継ぎワークショップのお問い合わせが増えました。

その頃、新しい社員が採用されました。これまでは、つぐつぐの金継ぎ教室に少しでも通ったことのある人か、漆芸経験者が採用されていましたが、完全に漆の未経験のメンバーでした。これまでたくさんの新入社員に教えてきましたが、完全に未経験の人に教えることに、難易度が高まりました。

Eさんはこれまで6名も新人を育てあげてきた自信があったのですが、これまでの新人が自ら質問し自ら成長してくれため、だんだんと教え方が手薄になってきたことを感じました。「できるだろう」とか、「分からないことは自分から質問してくれるだろう」という気持ちが出てしまい、初心者が分からないポイントを見つけるのが難しくなりました。それについて少し後悔が残っており、これからはもっと聞き出して、丁寧に教えようと思っています。

つぐつぐは創業から4年目となり、トライ・アンド・エラーを繰り返して年々仕組みが安定してきたのを実感しています。(今振り返ると、なぜだか一番社員数が多かった時に、一番しんどかったです。)4年目の終わりには、今の金継ぎ師の数では到底手に負えない修理の依頼になってしまい、金継ぎ師の業務負担を軽減するためにも、1ヶ月に受けられる修理数を決めて納期を区切ることになりました。その月に一定数の修理のご依頼があったら、納期を翌月にする方針です。これにより、ひと月に自分が修理する器の量が安定し、ワークライフバランスも整ってきました。

一方、修理のご依頼数の方が圧倒的に多いため、どんどんと修理納期が遠くなっていき、2024年4月時点では完成予定日が1年後となってしまいました。このことは、お客様にとても申し訳ないと感じています。金継ぎ完成が7〜8ヶ月後までだとギリギリお許しいただけたとしても、完成が1年後といわれると、「えっ」という気持ちになるのは当然だと思います。今後もEさんは、自分が培ってきた力で、できるだけつぐつぐの修理の完成納期を前倒ししたいと思っています。

今後のつぐつぐに期待すること

東京で金継ぎワークショップ(つぐつぐ)

Eさん:金継ぎ・漆芸が未経験の人を一から育て、半年後には金継ぎ師として活躍できる人材を多く輩出できているのは、本当にすごい会社だと思います。この点は、他の会社にはないと思います。

今まではEさんが中心に新人を教えてきましたが、このノウハウ・知識・教え方全てが、つぐつぐの英智・仕組みとして蓄積され、これから入る新入社員に漏れなく確実に教えられているようになればいいなと思います。金継ぎの学校のように…!

2023年11月に始まった「金継ぎ検定」も、金継ぎ技術を習得する全ての方のモチベーションとマイルストンになるので、社内の新人の育成にも貢献できると思います。

今のつぐつぐは恵比寿店と浅草店の2店舗だけ。今後金継ぎ師が増えていくのであれば、何店舗まで拡大するのかな…と思います。

金継ぎしていて楽しいこと・金継ぎが好きな理由

Eさん:正直、金継ぎが日常になりすぎて、いまは「金継ぎが好き!」という新鮮な気持ちではなくなりました。

しかし、自分が金継ぎ修理した器をお客様にお渡しして喜んでもらえる時は、とてもうれしいです。

そして、金継ぎをしていて、自分の技術が上がったと思うタイミングがあり、その時もとてもうれしいです。仕上げの金蒔きに納得がいかないときがあるので、金蒔きがうまく行った時に特に喜びを感じます。

これからの自分

Eさん:金継ぎは一通りできるようになったので、今後は漆芸全般をさらに学び、できるようになりたいです。漆でできることの基本を、全部やりたいです。

これからつぐつぐで金継ぎ師として働きたい方へ

俣野:これからつぐつぐに入社したい、働きたいと思っていう方には、どんなスキルが必要でしょうか?

Eさん:金継ぎや漆芸経験より、コミュニケーション力が高い人が向いていると思います。また、英語はできた方がいいです。外国人がつぐつぐの店舗に来ることが本当に多いです。つぐつぐの店舗だけでなく、東京は街中で、海外の方が多いです。

金継ぎの技術はつぐつぐに入社してから学べるので、それ以外の接客や協調性があるかどうかが重要だと思います。一人でつっ走るのではなく、一匹狼ではなく、お客様へはもちろんのこと、社内でも思いやりをもって行動できる方がつぐつぐには合っていると思います。

そして、私はいつもつぐつぐに入る社員に言っていることですが、「自分で学ぶ」という意欲・意志は絶対に持っておいてほしいです。つぐつぐに入って、全てを教えてもらえるという受け身な姿勢ではなく、自分で調べ、調べても分からないことを先輩に聞くことができる人であって欲しいです。今の時代、インターネットで調べれば、ほとんどの回答は載っていますしね。

それでいて、金継ぎには終わりはないと思います。自分が完璧だと思ったら、終わりです。いつまでも向上心を持って、学び続けることが大切だと思います。

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