金継ぎは従来、割れた磁器や陶器を漆と金で修復する技術として用いられてきました。
しかし、昨今、高級なガラス製品だけでなく、思い入れがあって捨てたくないガラス製品を修復したいとつぐつぐを訪れるお客様が少なくありません。
つぐつぐでは、通常漆職人さんが行わないガラス金継ぎを行ってきましたが、今やつぐつぐの金継ぎ教室の生徒さんからも、自分の手でガラス金継ぎをしたい!というご要望が多く、つぐつぐでは一般の方にもその手法を教室内だけで教えています。
通常の漆ではガラスをくっつけることができないため、つぐつぐでは特殊な「ガラス用漆」を使用し、販売もしています。
一般に公開していないガラス金継ぎとガラス用漆について、たくさん質問をいただくため、ご参考になればと思いこの記事を執筆しました。
つぐキット(金継ぎキット)でガラスの金継ぎもできますか?
あいにく、つぐキット(一般の金継ぎキット)では、ガラスを修復することはできません。
理由は、通常の漆はガラスのようなつるつるした面に対する接着力が弱いためです。
もしガラスを修理したいのであれば、別途材料が必要で、工程も異なり、高度な技術を要します。
最近、ガラスへの密着を強化した、ガラス用漆が販売されていますので、少なくともガラス用漆は購入する必要があります。しかし、合成接着剤のように、添付してピタッとくっつけて出来上がり!とはいきません。
また、全てのガラスの破損をガラス用漆で修理できるかというと、そうではありません。
ガラス金継ぎを行う上での注意点など、詳しくは下記の記事で解説しましたので、ご興味があればご覧ください!
つぐつぐが販売しているガラス用漆は、食品安全法を通ってますか?
はい、食品安全法適合のものになります。
当社以外でもガラス用漆は販売されていますが、食品安全法を通っていない(あるいは試験していない)ものもありますので、気になるようでしたら事前にメーカーに問い合わせることをお勧めします。
最近人気で、よく売り切れます。その時は再入荷をお待ちくださいm(_ _)m
ガラス修繕方法をわかりやすく説明した動画もしくは、説明書はありますか?
当社のガラス用漆には説明書を付属しておりますが、それだけを読んで、全ての破損タイプのガラスの修理が出来るようになるわけではありません。
店頭でガラス用漆をご購入される方へ、簡単に説明をさせていただくことは可能ですが、 ガラス金継ぎは高度な技術を要し、通常の陶磁器の金継ぎの基本手順を理解された上で、ガラスの修理を挑戦されることが前提なので、口頭の説明だけでできるものではありません。
事前にしっかりと基本の金継ぎ工程を習得されることをお勧めいたします。
ガラス金継ぎにはたくさんの注意点がありますので、つぐつぐの金継ぎ教室の中で、先生の指導のもと、ガラスの金継ぎを行うことも可能です。
また、あいにくガラス用漆の使い方を説明した動画は、現時点ではありません。
通常の漆(生漆)と、ガラス用漆の違い3つとは?
【違い1】ガラス用漆には少量の合成樹脂が添加されていて、ガラスのようなつるつるした表面への接着力が強化されていて、通常の漆より接着力が強いです。
【違い2】ガラス用漆は乾くのにより長い時間がかかります。通常の漆が数日〜1週間に対し、ガラス用漆は2〜3週間ほどと言われています。(工程によっても乾かす時間は変わります。)
【違い3】ガラスの破損断面はつるつるで、多くの場合隙間がないので、通常の金継ぎでは生漆に小麦粉を混ぜて「麦漆(むぎうるし)」を作って接着しますが、ガラスの割れを接着する時の多くはガラス用漆に何も混ぜず、そのまま接着します。
通常の漆(生漆)と、ガラス用漆で、共通すること5つとは?
①どちらも、茶色い液体です
②そして、どちらも、皮膚につくとかぶれます
③乾かすために漆風呂(温度20〜30℃、湿度70〜85%)という条件下に長時間置くことが必要です。
④色粉を混ぜて、さまざまな色を作ることができます。(ただし、もともと茶色いため、純白にはできないです)
⑤修理は1回で完成するものではなく、器の破損状態によりますが、10回くらいかかることも、それ以上のこともあります。
ガラス金継ぎ特有の注意「色」
ガラス用漆を使ってガラスを金継ぎできたとして、1つ重大な注意があります。
それは、「色」です。
透明なガラス製品が多いと思いますが、ガラス用漆は茶色いため、接着した断面が茶色く透けて見えます。たとえ表面を金蒔きしたとしても、斜めや裏側から見ると、破損部が茶色く透けて見えるのです。陶磁器の金継ぎでは、器物が透けて見えることはありませんから、接着剤や欠けを埋めるパテが茶色くても問題にはならないのですが、ガラスの場合は最後の審美性に影響を与えます
そこでつぐつぐでは、いっそのこと、底に塗るガラス用漆に色粉を加えて、真っ黒にすることがあります。
面から見ると金だけど、裏から見ると黒になります。
このような色のコントラストを、自然のものとして受け入れていただけるのなら良いのですが、お好みではない場合は、接着する内部に関しては透明な合成接着剤で修理する以外方法がありません…。修理をご希望の方は、あらかじめご了承ください。
▲ 左:面から見た様子、右:裏から見た様子
【番外編よくある質問】翡翠(ひすい・Jade)に金継ぎしたいのですが、つぐキット(金継ぎキット)でできますか?
通常の漆(生漆)で翡翠(ひすい・Jade)を接着・修理できるか、モノによるため、100%保証ができません。
理由は、翡翠の表面がガラスのようにツルツルしている場合があるからです。陶器のように表面がザラザラしているものであれば、くっつくことがあります。
ガラスのような質感の翡翠を金継ぎで補修する場合、ガラス用漆を使う方がお勧めです。
しかし仮に修理ができても、翡翠のブレスレットやネックレスなど、揺れたり衝撃が加わるアクセサリーの場合、強い衝撃が小さな破損部に加わった時に再度破損する可能性があるため、金継ぎ後は観賞用の置物にしていただく方が安心です。
翡翠に関わらず、ブレスレット・ネックレス・指輪などの接着面が小さいアクセサリーは、修復箇所にもよりますが、金継ぎしても使用時に強い衝撃が加わり再度破損する可能性があります。
ご自身で金継ぎする以外に、つぐつぐのプロ金継ぎ師に修理を依頼するときも、写真を添付して、修理可能かどうか事前にご相談ください!
(翡翠金継ぎに関する英語のFAQ: https://kintsugi-kit.com/pages/professional-kintsugi-repair-requests#jade)
ガラス金継ぎに関するまとめ
金継ぎって奥が深くて、まだまだいろんな可能性があると思っています。
他にも今後ガラス金継ぎに関する質問をいただきましたら、この記事に追加したいと思います!(海外のお客様からも同様の質問が多いため、英語の記事も書いています!)
まとめると、ガラス金継ぎは大変難しい技法です。まずは陶磁器に対する基本の金継ぎができてから挑戦してみましょう!
あるいは、どうしてもガラスを金継ぎをやってみたい方は、つぐつぐの金継ぎ教室に学びにきてね!
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