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【職人が金継ぎを始めたきっかけ (6)】うるしと漫画 堀 道広さん

はじめに

国内・海外で年々注目が加速している金継ぎ。
金継ぎとは、割れたり、欠けたり、ヒビが入った器を、漆(うるし)と呼ばれる漆の木の樹液を加工した塗料を用いて修復し、最後に金などのお粉でかわいらしく仕上げる日本の伝統技法です。モノがまだそれほど多くはなかった時代には、壊れたモノを修復してもう一度使うことは当たり前でした。大量生産・大量消費の今も受け継がれるべき、日本の素晴らしい文化です。

この金継ぎを職業にされている日本中の職人さん(「金継ぎスト」と呼んでいます)にインタビューをしました。金継ぎを始めたきっかけや、その想いを伺う中、それぞれの金継ぎストの人生に触れることができ、金継ぎにもっと興味を持つことができました!

ミッション

金継ぎを、金継ぎストからの目線で語っていただき、世の中に広く知ってもらう! 

今回の金継ぎスト:うるしと漫画 堀 道広さん

堀道広さん ホームページ 
歳時記(くさいじき)

漫画家である傍ら、東京(阿佐ヶ谷・西麻布・西荻窪)と神奈川(葉山)で金継ぎ部と、お仕事場で金継ぎによる修理もされている堀 道広さんが、快くインタビューをお引き受けくださいました。その内容をご紹介します。

堀 道広さんプロフィール(堀道広さん ホームページより)

75年 富山生まれ
石川県立輪島漆芸技術研修所卒
98年『月刊漫画ガロ』でデビュー。
漆職人として勤める傍ら漫画の持ち込みを続け、03年第5回アックス漫画新人賞佳作。
以来、特徴ある絵柄で地道に活動を続ける。
また、漫画の仕事と平行して、割れた陶器を漆で修復をする教室「金継ぎ部」を主宰。
金継ぎによる器と漆器の修理、漆の小物製作などその活動は「うるしと漫画」の分野でのみ特化する。

金継ぎインタビュー

漆芸・金継ぎの世界に足を踏み入れたきっかけ

富山県ご出身で、元々蒔絵師になられたかったそうですが、実はフリースタイルが好きで、漆の無地の塗りで形で魅せることが格好いいと思うようになられたそうです。また東京には、月刊漫画ガロに掲載されることになり、上京されたそうです。

堀さんと金継ぎ教室

私が通っている金継ぎ教室で以前、職人として7年ほど勤務されていたそうです。その後もたまにお手伝いをされていて、親戚のようなご関係だそうです。当方の師匠である柴田克哉先生とも、20年以上のお付き合いだそうです。

あくまで職人としてご活動されているため広くご発信するおつもりはなく、漫画家の傍らこっそりと金継ぎをされているような感じだったそうですが、その素敵なお人柄と、「漫画×うるし」という唯一無二の面白い組み合わせもあってか、現在も雑誌の取材が後を絶えないように伺えます。

漫画×金継ぎ、現在のご活動

現在のお仕事の中で、漫画が6割、金継ぎが4割くらいを占めていらっしゃるそうで、個展や漆に関することにも従事されています。金継ぎを教える「金継ぎ部」は月10日ほど開催され、金継ぎによる器の修理もされています。

インタビューをさせていただいた時は、福岡で個展を開催中でした。

(福岡の下記2箇所ダブルで個展)
堀 道広展「double」2020年1月18日(土)~26日(日)
A)喫茶ふら 福岡市中央区平尾2-17-21 11:30~17:00
B)西木倉庫 福岡市中央区薬院1-4-13

お仕事場の表札 

金継ぎ部

金継ぎ部では女性が9割くらいで、30~40代の層が多いそうですが、20代の若い方もいらっしゃるそうです。金継ぎ部は1授業7~8名のお教室ですが、その内1名くらいは海外の方だそうです。堀さんはこれまでずっと漆に関わってこられたため、合成漆ではなく、本漆のみを使用して金継ぎをされているそうです。

金継ぎで難しいこと

金継ぎ部発足から10年ほど経ち、2018年には「おうちでできるおおらか金継ぎ」という、初心者に向けた、漆を使っておうちでできる金継ぎの方法をご紹介する本もご出版された堀さんですが、金継ぎすればするほどご自身の中の精度が上がってこられて、納得いくように仕上げるのが難しいとお感じだそです。金継ぎは壊れたもの(マイナス)を修理してゼロにするものですが、修理者の癖なども入るので、中途半端にならないようにと心がけていらっしゃるそうです。

おうちでできるおおらか金継ぎ(出版社: 実業之日本社 Amazon 売れ筋ランキング1位 ─ 趣味・実用の陶芸)

クリエイティブなお仕事場 時計は絵なので動いていない 

金継ぎのポジション

静かに長いブームが続いている金継ぎ。堀さんの手がけた「おうちでできるおおらか金継ぎ」の本では、金継ぎは手間をかければかけるほどよいというものではないことを教えてくれました。堀さんとしては、みんなが楽しんで直せるよう、最低限できればよいことを、学びやすいように教えていらっしゃるそうです。伝統的な金継ぎは全部で9工程くらいあると言われていますが、金継ぎ部では、器によって差がありますが、概ね5~6工程で一通り完成できるようになっています。

また金継ぎは自然の材料で修理しているため、完璧ではなく、金継ぎした部分がまた取れてしまうこともありえます。例えるなら、普段私たちは傘の修理にそれほど金額をかけないですし、数万円も払って金継ぎした部分が取れてしまったら悲しくなるのではと考え、金継ぎでの修理にあまり高い金額はいただかないようにされているそうです。堀さん自身、控えめな気持ちで金継ぎをされているそうです。

漫画家・職人としての暮らし

現在の個人としてのご活動は楽しいそうです。「まるで、世の中に、カッターのような頼りない物で、切りつけに行っている感じ」と、凡人の私の持っている言葉を超越した、芸術的な表現でその生き方を表現してくださいました。堀さんは漆の技術を基盤にされながら、漫画・イラスト・本・個展など様々な分野にチャレンジされているのが伺えました。そんな一本強い芯をもった生き方に、「何か一つでも、自分の確固たる手に職があるって、いいな…」と思わされました。

金継ぎに対する自分なりのポリシー

堀さんは常に、器を作られた作家さんをリスペクトし、器より前に出ないように金継ぎされているそうです。傷は景色になりますが、あまり修理を目立たせず、また使えるように修復されたいそうです。

これからの金継ぎ

金継ぎには、金継ぎアーティストのような「スター」が必要なのではないかと伺いました。世間から叩かれるかもしれないけれど、金継ぎのスターのような方がいたら、金継ぎが今後さらに盛り上がるのではないかと。堀さんご自身は表現の場が他にもあるため、金継ぎアーテイストとしてではなく控えめにご活動されているそうです。しかし最近金継ぎ部で、あるおばあちゃんから、「金継ぎはうれしいことですね」と言ってもらえて、堀さん自身もうれしくなったそうです。

堀さんがいらっしゃった石川県では、漆は地場産業であり、一般の習いたい方は少なく、職人さんは人に教えるよりも自分の腕を極めた方が良いという考え方もあったようです。また以前金継ぎは、漆業界では副業的なものでした。しかし東京は人口が多く、お教室で漆や金継ぎを習いたいニーズが多いようです。今後、必要のないものは淘汰され、最低限のものだけが残っていくのかもしれませんが、堀さんはこの業界を、本・漫画など様々な形で応援したいそうです。

作業台。金継ぎに必要な道具が並ぶ
立派な漆風呂[室(むろ)とも言う]

最後に

「金継ぎというのは本来控えめな立場のものであり、今となっては自分に向いているのかな」とおっしゃっていましたが、その中に独創的なお考えの真髄と、金継ぎへの思いが垣間見れました。漆を使った日本の伝統技法に、漫画という新たな掛け算をすることで、この少しニッチな分野を、何倍にも面白く世の中に伝えていただきたいなと思いました。私自身は堀さんのファンで、いつもツイッターやインスタグラムをチェックして元気をもらっていますが、今後も益々のご活躍を見守りたいと思います。

最後にツーショットを撮らせていただきました。
お忙しい中ありがとうございました。

取材者Yuki(左)堀 道広さん(左 )

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