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金だけじゃない!共継ぎ(共直し)で器と同じ色に修理

漆による陶器・磁器の金継ぎ修理を、おそらく日本最大級の数承っている、つぐつぐです。

この記事では、以前よりじわじわとご依頼が多くなってきた、修復跡を金や銀で目立たせない修理方法「共継ぎ・ともつぎ」(=共直し・ともなおし)についてご紹介します!

1. 共継ぎ(共直し)と、その歴史

共継ぎ(共直し)は、壊れたモノを接着したり欠けを埋めたりして凹凸を無くした後、修復箇所が目立たないように元の器の表面の色と合わせて直す技法を言います。筆者が調べたところ、共継ぎ本来の意味としては、壊れた同じものの破片同士をくっつけて元の状態に復元する方法を指します。例えば、あるお茶碗が2分割になって、それをまたくっつけて直します。当たり前じゃないか?と思われるかもしれませんが、割れた破片の片方がなくなってしまったり、ちょうど同じ形の別のお茶碗が割れていて、デザインがおしゃれなので別のもの同士をくっつけてみたり、他の素材を代用することだってできます。これを「呼び継ぎ(よびつぎ)」と呼びます。別のもの同士を継ぐので、陶器と木片、陶器とガラス片の組み合わせだって良いわけです。

そういった観点でみると、共継ぎと呼び継ぎは、反対の意味になるかもしれません。

共継ぎについての歴史を調べようと試みましたが、文献など参考になる情報は見つかりませんでした。筆者は現在も調査を続けていますので、また何か新しい情報が入り次第、追記します。

ここで、「共継ぎ」という修復方法に関し、現在、大きく分けて2種類ありますのでご紹介します。

①英国式修復法「カラーフィル」

西洋の美術品などは、破損してしまったときにエポキシ樹脂や顔料などを用いて、元の姿に修復されています。特にイギリスで生まれた英国式の修復法は、プロフェッショナルに学び受け継がれています。伝統的で古くからある貴重な調度品は、どの国でも丁重に美術館などで保管され定期的に修復されており、修復できる人のニーズが高まっています。カラーフィルは観賞用にするような品物の修復方法のため、ここでは食品安全性が担保されていないことは問題ではありません(再度使用する食器にはカラーフィルは不向きです)。合成接着剤で割れをくっつけた後、エポキシのパテの中に顔料を入れて混ぜ、美術品と同じ色に調合して欠けを埋め、修復跡がわからないように仕上げます。

カラーフィル以外の修復方法では、接着したり欠けを埋めた後に顔料のスプレーをかけて元の色に合わせる方法もあるそうなのですが、美術品の壊れていない部分も合成の液体で覆ってしまうことで、年月が経つごとに劣化する範囲が広がってしまうことから、できるだけオリジナルの部分はそのままにして、破損した箇所だけを修復しようと考えて生まれたのが、英国式のカラーフィルだそうです。

②漆による色合わせ「共継ぎ、共直し」

縄文時代からヒトは漆を使って壊れたものをくっつけて修復してきましたが、室町時代の日本では、その割れ目に金粉を蒔いて装飾する金継ぎが誕生しました。修復跡を目立たせることで、その形を景色として愛でる習慣は、日本独自の侘び寂びの考えとして、世界から注目されています。しかし修復方法としては、必ずしも金粉や銀粉を蒔いて仕上げなくても、修理としては完成します。

漆を使った修復の良いところは、なんといっても食器に使用しても安全なことです。しかし、硬化するのに特定の条件(温度20〜30℃、湿度70〜85%)が必要で、時間がかかることから、手間暇がかかる修理方法としても知られています。

2020年から2022年のコロナ禍に、金継ぎの認知度は約75%まで上昇し(つぐつぐの調査結果より)、大切な器を金継ぎで修理するのがより一層身近になってきました。つぐつぐで受け付ける金継ぎ修理でも、一番人気の仕上げ色は「金」、次いで「銀」ですが、金継ぎの事業を立ち上げた最初のころから、一定数の方に「元の器と同じような色味で直して欲しい」というご要望がありました。あえて目立たせない、という控えめな仕上げも、一つの選択肢として必要かもしれません。

2. 漆でどうやって陶磁器と同じ色を作るの?

金継ぎや銀継ぎが行われてきた理由の一つとして、漆で色を出すのが非常に難しいことがあります。漆は本来茶色なので、どのような顔料を混ぜても、時間が経つど少しずつ茶色っぽく変色していくのです。そのため、最後に弁柄漆を薄く塗って、その上から金粉や銀粉を蒔くことで粉が定着し輝く金継ぎの装飾は、漆の性質を理解しながら優美に仕上げるための的を得たものだったかもしれません。

現在漆やさんでは、さまざまな色の漆芸用顔料が販売されています。漆による茶色っぽさを減らして、色の発色をよくするためにはたくさん顔料を入れたいですが、漆:顔料=1:1が最大です。(これ以上になると粘度が高すぎて塗りにくいし、刷毛ムラが消えない)さらには、漆の乾かし方にもポイントがあります。実は、漆は急速に乾かそうとするとより茶色くなる特性があるため、最初は湿度の高くない漆風呂(室)に入れ、徐々に湿度をあげていき、ゆっくり漆を乾かすと、顔料の発色がよくなります。

大変難しい色合わせですが、和物の器は少し色味が暗く味のある雰囲気のあるものが多いので、なんとか試行錯誤して色を近づけることが可能です。

3. 漆で作れない色

漆による共継ぎでどうしても出すことのできない色があります。それは「真っ白」です。先程述べたように、漆は本来茶色いので、白い顔料を最大限混ぜたとしても、どうしても肌色・薄茶色っぽく変色してきます。

真っ白に仕上げたい時は、卵殻(卵の殻)を貼り付けたりすることもありますが、卵の殻の割れ目が見えますのでまた別の見た目になり、これでは代用はし難いです。

4. 共継ぎ・共直しの依頼方法と金額

共継ぎの種類と、漆による共継ぎの性質について理解が深まったところで、一部の人には興味を持っていただいたかと思います!私も共継ぎを依頼したい、というあなたへ、その方法をお伝えします。

そもそも金継ぎ自体の認知度が低かったので、つぐつぐへの修理依頼申込書には、仕上げ色の選択欄に「共継ぎ」あるいは「色合わせ」の選択肢がありませんでしたが、現在追加中です。しかし、申込書に追加しても、どのような雰囲気で直して欲しいかお気持ちが伝わりにくいかと思います。そこで、割れたお品物がつぐつぐに届いた時に本見積もり金額を載せたメールを送りますので(あるいは電話でお伝えしますので)、その時に詳しくお伝えくださると安心です。

気になる金額ですが、実は金粉を蒔くより色を合わせる方がより一層手間暇がかかるため、一色3,300円〜(税込)の追加料金をいただきます。2色調合する場合は6,600円になります。

ただし、漆やさんですでに売られているような色味(真っ黒や弁柄色)では、追加料金は頂戴しません。つぐつぐの修理師が、あなたの器の色味に合わせて色を調合するのが必要な場合に、追加料金となります。

頑張って色合わせしますが、よく見ると多少色の違いは出てしまいますので、その点はご了承くださいませ。

5. 共継ぎ・共直しについてのまとめ

陶器・磁器の修理は金継ぎだけでなく、共継ぎとよばれる方法で、修復跡を目立たせないで直す方法もあることをお伝えさせていただきました。しかし金継ぎも共継ぎも、どちらも手間暇と愛情を込めて、手作業で美しく仕上げる修理技法には違いありません。

今後、一人でも多くのお客様が、自分の好みにあった修理を気軽に選択でき、より一層愛着を持って器を使い続けていただければ、これ以上嬉しいことはありません。つぐつぐ一同、技術の向上に日々邁進しております。

お困りのこと、ご相談がありましたら、当サイトのお問い合わせよりご連絡くださいませ。

金継ぎ修理についての詳しい情報は、下記の記事をご覧ください。

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